『ドーハ以後』
以前に書いたコラムの中で、 「いい加減な評論などネットで馬鹿にされる」と記したが 別にネット上でのすべての発言が正しいと主張する訳ではない。 中には『?』と思わせるものもあれば、 どこかのスポーツ新聞誌の様に一部の発言だけを大きく取り上げ、 発言者本来の意図を全く違う形で曲解した様な発言もある。 今回、紹介するのはインターネットの世界で 数多くの誤解を受けるライターの著作品である。 一口に『サッカー評論家』と言っても人脈や 本人の嗜好によって得意分野は様々に別れる。 杉山氏の場合は本場の初体験である82年のスペインW杯で 長期間に渡ってW杯を見続けたベテランに太刀打ち出来なかったのが、 その後のライター人生を決定付けた。 年間200日に渡ってヨーロッパと南米を飛び回り、 各地から詳細なゲームレポートや キーパーソンのインタビューを発信し続けたが、 必ずしも客観的で万人の賛同を得る文章かと言えばそうでもない。 尤もその事を咎めるつもりはない。 どんなライターでも『客観的な』レポートやコラムを書く事は不可能であり、 寧ろ行間に溢れる筆者の思いが隠し味となって読者を惹きつけるからである。 問題は自分が書きたい対象が時代のニーズに合至しているかどうかだろう。 生計を立てねばならないプロの場合は単に好きだけではなく、 時には時代のトレンドに合わせた文章も書いていかねばならない。 その意味では杉山氏は幸せだったかもしれない。 彼の読者層であるコアなファンが欲したのは自身の得意分野である 攻撃の魅力と守備のスリルが同居するフットボールが ヨーロッパを支配していた時期だったのだから。 この著書は3部構成となっており94年〜98年までの日本代表、 同時期の欧州の強豪クラブ、そしてフランスW杯直前と 本大会の強豪国と様子をレポートしているが見所は第二部だと思う。 別に第一部と第三部の出来が悪いと言う訳ではなく、 (出色の出来と言う訳でもないが) 彼本来のテイストは第二部の『欧州見聞録』に凝縮されているからである。
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