『繁栄と衰退と』
「繁栄と衰退と」岡崎久彦 文芸春秋 『フライング・ダッチマン』 フットボール愛好者またはファンであるならば必ず耳にする ヨハン・クライフの代名詞の真の意味を日本人が理解しているとは言い難い。 通常ならば『空飛ぶオランダ人』叉は『彷徨えるオランダ人』と訳される この言葉は74年にブラジルの時代に幕を引いた 伝説的なジャンピング・ボレーシュートからの命名だと思われている。 だがそれは限りなく『直訳』に近い、 そう英国皇太子を意味する『プリンス・オブ・ウェールズ』を 『ウェールズの王子』と訳す様なものだ。 オランダの成り立ちとその黄金期を知れば この称号が如何にして重要な意味持っているかが理解できる。 とは言っても『オランダの黄金時代』を取り扱った書籍は意外と少ない。 彼等の後に覇権を握ったイギリスの飽くなき自己宣伝の前に その光は閉ざされているからであり、 極東に位置する我々の目に詳しい事跡が伝わる事など稀である。 だが、外務省のキャリア官僚であった筆者は 90年代初頭の日本政府の傍若無人な金満振りと (今となっては懐かしいが) 拙劣な外交に(これはいつもの事だが)危機感を抱き、 同様の道を辿った海運国の興亡の歴史の解説を試みた。 必ずしも豊富とは言えない資料の中、 古き良き時代のエリートとしての経験と事務次官コースから外れた (失礼な言い草だが経歴から見ればそう判断せざるを得ない) 『脇道街道』からの視点がこの本の重厚さをもたらしている。 通称オランダ、正式名称ネーデルランド連邦共和国が スペイン王家の『領地』から(教科書では『植民地』と書かれているが) 独立するのは宗教が理由だった。 清貧を掲げるカトリックが統治手段であるスペイン。 己の役割を推奨するプロテスタントを信仰するネーデルランド人。 妥協の余地なき争いは血生臭い戦争へと発展する。 当時、欧州最強の軍隊を所有していたスペインに対して 独立派(ネーデルランド側は一枚岩ではなかった)は 一度ならず苦杯を喫するが様々な幸運と必然の要因に拠って 事実上の『スペインからの自由』を手に入れる。 そう『自由』であって独立ではない。 この事実が彼等の興亡の歴史に深く関って行く。 元来、資源に恵まれず気候にも恵まれない風土は彼の土地に住む人々は
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