『2つの顔』


シュバルツの連勝を告げる試合終了の笛が駒葉スタジアムに鳴り響く。
だがその音は物質的な攻撃力さえ感じられる
ブーイングに拠って完全に消されていた。
発するのは連敗を喫したは圧倒的多数の『紅い悪魔』だけではない。
インターネット・雑誌・微かなテレビニュースを通じて
初戦の上質な内容を知った関東方面在住の
アウェーチームのサポーターも含まれている。
「なんじゃこのツマラン試合は〜」
「水谷ーっ。ワレ、儂等をおちょくっとんのか」
期待を裏切られた失望感と怒りの矛先は
『リアリズム』に徹した指揮官に向けられた。

予感はスターティングメンバー発表の段階からあった。
「近藤がスタメン?」
前節では終了間際の時間稼ぎと守備固めの為だけにピッチに入った
ディフェンダーがスタートから左サイドバックの位置に入っている。
「吉口がハーフって事は・・・・」
これは昨シーズンの手堅いシステムの再現なのだろうか?
「徳の名前が入ってないぞ」
その独特のセンスで攻撃を彩るパッサーのスタメン落ちは
膨らんでいた期待の風船に針を突き刺した。

ピッチの上に陣取る漆黒の布陣は
『守備重視』と言う戒律の支配下に置かれていた。
安全第一を旗印を掲げる4バックはオーバーラップと言う概念を捨て去って、
トリプルボランチとの連携でレオーネの高速カウンターの牙を叩き折る。
前線の3人も無闇に得点は狙わない。
トップ下の小栗のキープ力を信じて
羽生と礒野が上下左右のムービングを繰り返す。
狙いはコンビネーションの整わないディフェンスへの圧力。
それはノックアウトを狙うストレートではなく、
ポイントを稼ぐボディブロー。
渋いプランは徐々にスタジアムの欲求不満を高めていった。


その日の唯一の得点シーンは
囲碁や将棋の様な手堅さと緻密さは感じられても、
スポーツ本来の魅力である躍動感を感じさせる物ではなかった。
中盤でじっくりとボールを回す遅攻は
ホームチームの組織の未成熟振りを曝け出す。
不揃いのデイフェンスライン。
突っ立ったままの中盤。
パスに感応出来ない前線。
様々な歪みは広大なスペースとなって現れ、
走り込んだ羽生を食い止めるのは警告付きのタックルでしかなかった。

本来のプレースキッカーをベンチで待機させている
アウェーチームのキッカーは矢野。
精度的には徳宮に劣らない彼だが、
得点へのイマジネーションは右サイドに陣取る8番程ではない。
不足分はこの日一度切りのデイフェンダーの攻撃参加。
密集地帯を避けたポジショニングによる近藤の一部初得点は
地面に叩き付けるヘディンググシュートだった。

この得点シーンは危険水域に入りかけた
観衆のフラストレーションを一時的にあったが沈静化した。
追加点を望むシュバルツサポーター。
絶望感を振り払うかの様により一層の声の圧力を掛けるレオーネサポーター。
そんな観衆の願いを無視するかの様な後半30分の選手交代が
悪い意味の起爆剤となったのはやむを得ない所ではある。

「18番アウト・8番イン。15番アウト・4番イン」
当初、大多数の観客はその交代の意味を測り兼ねた。
柳木を入れるのはまだ解る。
吉口が小埜のマークにてこずっているのはスタジアムの共通認識であり、
−翌日の新聞には5・0の辛い点数が提示されていた−
本職のデイフェンダーである近藤に張り付かせるのは理解出来る。
だが・・・・
「羽生アウトってどうやって点取るの?」
偉大なるスペシャリストは自分では何も出来なくても、
お膳立てさえ揃えば、彼一人だけが描ける絵画を提示出来る筈である。
なのに・・・・
その答えに関する反応は翌日のスポーツ新聞の大見出しが声高に主張していた。


『エンターティナーを否定した采配』
翌日の埼玉系スポーツ新聞は有機的な攻撃手段を模索出来ない
『魂のチーム』に対する苛立ちを相手チームが採用した
定番戦術にぶつける事で解消しようとしていた。
尤も彼等の主張は単に矛先を変えただけでなく、
実際にスタジアムの空気を代弁していたのも事実なのだが。

漆黒の8番と9番は共に足元にボールがある時にその才能を
最大限に発揮するタイプのブレイヤーである。
動きはスローだが天性のパス感覚が繰り出すスルーパスと
不本意な努力で取得した右サイドからのアーリークロス。
ゲームメイクセンスとキープ力が融合したトップ脇は
相棒となりつつある羽生から盗んだボディシェイプで
相手ディフェンダーのチェックを巧みにいなす。
これにスピードとドリブルに優れた左サイドのアタッカーが絡んだ場合、
ピッチに描き出されるのはアーティスティック・インプレッションが高く、
それでいてフイニッシュの可能性の少ない絵画だった。

抵抗し難い圧力がブーイングの形状でゲームキャプテンに襲ってくる。
だが、彼に怯えはない。
あるのはアウェーでの戦いに身を置く快楽。
別にホームでの沸き上がる心地良い興奮が嫌いな訳ではない。
だがディフェンダーとしてなら寧ろ肌に突き刺す敵意を感じつつ、
相手の攻撃を封殺する方に快感を感じる。
悪役万歳。
『マエストロ』と仇名される男は耽美系の主役を張れる
端正な顔立ちとは裏腹に精神面ではヒールである事を望む風があった。

試合終了の10分前から埼玉スタジアムは、
スタンド全域が危険水域に入った敵意を吐き出している。
敗北への苦い予感、攻撃を形作れない苛立ち、
そしてモダンに触れられない飢餓感。
気持ちは理解出来ると水谷は思う。
実際、評論家としてなら同じ見解を出すだろう。
だが我々は常に『長距離移動』と言う重い十字架を背負って
敵地に望まねばならない。
今までは全26試合を乗り切るに戦う為に。
そしてこれからは確実に覇権に近付く為に。


「スポンサーの件では済まない事をしたな」
夏と言うには日差しが弱く、秋と言うには些か気温の高い初秋の昼過ぎ、
東京駅へと向う専用バスの中で隣で雑務を処理するねずみ男に対して、
鬼瓦は誠意の欠片もない謝罪の台詞を口にする。
「ああ、あれはあれでいいよ。金の為に勝利を逃す訳にいかないからな」
数日をかけて用意したプレゼンテーションが無駄になっても
達観していたのだろうか、
金村の口調は油の抜けたさっぱりした感じだった。

「あそこは余計な注文が多くてな。
 インタビューではロゴ入りのシャツなり帽子を被れだの、
 オーナーズシートはたくさん用意しろだの、
 あげくはスタッフを派遣させろだのと五月蝿くてな。
 どうやって辞退しようかなと悩んでた所だった」
下手糞な演技に走らない所を見ると本心らしい。
「だがこの先どうする。うちはまだまだ危険な領域だろ」
レッドゾーンからは脱出しつつあるとは言え、
確固たるスポンサーを持たない
『市民球団』の財務内容はどうみても安定とはほど遠い。

「金額以上の口を出す連中よりも、小口だけど何も言わない連中を捜すさ」
「当てはあるのか」
「開幕戦を見た生き証人様達が強力な支援となり得るよ」
「?」
「今までボランティアと言う形でしか発露出来なかったおらが街の心情が
 チームとしての強さに重ね合わせられる様になったらしい。
 うちの掲示板を見れば解るだろ」
携帯に繋いだノートパソコンからは
レオーネーと関東在住のシュバルツサポに対して、
『あれがアウェーの戦い方』と熱心に擁護する
地元のサポーターの書き込みが多数見られた。
「この層を対象とするのは地元の地場産業さ。
 宇和じゃまだまだ『インターネット』が強力な攻撃魔法となるからな。
金はホームで稼ぐさ。アウェーは勝ち点だけでいいよ」
素っ気無いへぼGMの脳裏には既に目算のついている
地元企業の担当者の顔が浮かんでいた。


 

「コンビネーション」へ続く。

「調和するタレント達」へと戻る。

プロヴィンチアへ戻る。

トップページへ戻る

独自ドメインの取得をするなら 過払い金の回収ならこちら 過払い金の回収ならこちら
[PR] | 自動車保険監視カメラ消費者金融スピリチュアル八王子調布三郷久喜中国SEO対策消費者金融車 買取テンプレート沖縄旅行免許合宿二輪引越しプレゼントゴルフ会員権留学レーシックマッサージFXアフィリエイトFXホームページ制作デイトレードハワイ旅行タイバンコクハワイ レンタカーベスト ハワイ ホテル レーツバリ島Hawaii hotelsHawaii Activitiesbhhrハワイホテルテキスト広告
【運営会社「パラダイムシフト」サービス】 ハワイ現地オプショナルツアーリラックマ) - ビジネスクラス航空券 - 格安航空券(1) - 格安航空券(2) - 海外ホテル - 韓国旅行 - タイムシェア - ホテル 予約
無料ホームページ - 携帯ホームページ - 無料ホームページ作成 - レンタルサーバー - ブログ - ヴィラ - ハワイ コンドミニアム - バリ島 ホテル - プーケット ホテル - レピュテーション・マネジメント・ツール - ハワイ ブログ - Timesell - 国際通話 - ホノルルマラソン - サイト監視 - 風評被害 - ホテル比較 - Delta - ホテル予約