二輪の書
(巻の参)
教習をはじめて二週間、第一段階を無事クリア。てっきり時間オーバーするかと思っていたが意外なほどあっさりすすんだ。
第二段階の最初はシュミレーション教習。今回は道路での走行をシュミレーションする。二輪は自動車と違い路上教習が存在しないからだ。今回は三人で教習が行われた。発進の合図だしわすれなど問題点を注意される。最後にプレーしたのは私だった。
「あと一つ気づいていない失敗点があるがわかるかなあ?」
教官が挑戦的にいってくる。わからん・・・。いったいなんなんだ?
自分が知っているとうりに乗っていく。すると教官が
「あ、わかってますね。ちくちくいおうと思ったのに」
何が? 私のプレーが終了すると教官は説明をはじめた。
「車線変更のときは合図をだして三秒たったら車線変更にはいります。でも、実際、道路ではしっているとき三秒待ってたら車線変更できなくなる。まわりの車がつめてくるから。車に乗りなれた人ほど忘れてしまっているんですよ。」
なるほど。ただ私は早めにウインカーだしただけで特に意識はしていなかった。ウインカー出し忘れによる減点を極度に恐れた結果の副産物といえよう。
その日は授業があったため教習は夜八時ごろいったのだが、その日はその後、バイトの連中と飲み会だった。翌日も教習を予約していたのだが、さすがに朝からはきついので、バイト前の時間(4時ごろ)にしておいた。前日まで朝の9時で予約しておいたので(飲み会のことをすっかり忘れていた)、急いで予約をきりかえた。危なかった・・・。
第二段階はほぼ一週間で終了した。一日二時間づつ予約がとれる日が多かったからだ。第二段階では体験教習が多くあった。
四輪車にのって二輪車の危険性を認識する教習。教官が乗ったバイクが危ないことを次々とやってくるのだが、さすがにプロ。転倒することなく危機を回避する。曲芸のようだ。
急ブレーキ教習。急制動と同じ要領で前輪ブレーキのみでとまる、後輪ブレーキのみでとまることをやる。私は急制動でロックして停止していたので、教官にそれじゃ危ないから教習できんなといわれ教官の納得する急制動をやることになった。一気にブレーキを握らないこと(ロックしてしまう)といきなりクラッチをきらない(エンジンブレーキをきかす)ことに注意してやると、教官の納得するものができた。その後、前輪のみのストップ。さすがに制動力が強いだけあってすぐにとまれる。今度は後輪のみ。なかなかとまれないためか後輪が不安定になり車体自体がバランスを崩す。教官は事前にバランスが崩れるから前輪ブレーキで止まってもよいといっていたが、予想外の事態にバランスをとることに夢中になって結局ズルズルと停止することになった。教官いわく良い体験になったとのこと。
カーブ教習。教官いわく
「カーブの体験教習があるから楽しみにしててね」
カーブをスピードをおとさずにまがるという、シュミレーションでやったことを実際にやる。あれは危険だからやらないんじゃなかったんですか!? あぶないようだったら他の車を止めるとの事。思いっきり車線をこえたのはいうまでもない。その後、カーブで停止する教習。教官がカーブの途中でパイロンを投げるのでそこで停止する。
「40キロなら救急車、20キロなら傷薬。だから10キロでこようか」
と教官がいうので10キロでやってきた。10キロはかなり遅い。教官がタイミングを見計らってパイロンを投げる。停止!!
「!?」
急ブレーキのつもりはなかった。しかし、体がバイクから飛び上がカーブの内側に飛んでいってしまった。教官のいったことは本当だ。もっと速度だしていたらどうなったかわからない。二輪は特に命を張って走っていると教官はいっていたが、本当にそうだ。命のはかなさとスピードの恐怖を知った・・・。
緊急回避教習。教官が合図をだすので合図がでたら左に進路を変更して教官をかわす教習。やってみると教官の合図はずいぶん遅い。その後、教習生らにどこで合図をだしたかをきいてくる。私は自分のイメージで答えたが、教官が合図をだしたのは随分前だった。脳が情報を処理するまでの時間の長さを体感した瞬間だった。
その後、教官が赤と白の旗をだすので赤なら左、白なら右、両方なら直進ということで回避行動をとれとのこと。楽勝だろう。と思って挑む。教官が白の旗を左側に出す。左に出されたのでつい左と思い左にきったが、次の瞬間「白は右」と思いとっさに右にきる。教官はさっとかわすが、後で
「カリウス君はひごろの恨みをこめて(私を)ひき殺そうと!?」
とかいわれてしまった。そんなつもりはありませんよ・・・。
危険予測ディスカッション。自動車免許のときにもやったがお互いの運転をみて危険なところを指摘する教習。シュミレーターで行う。シュミレーターになれたせいか随分調子に乗った運転をしてしまい後で批判の的に。危険予測ということをすっかり忘れてました・・・。同時に急ブレーキのシュミレーションも。最初はパイロンを通過したら止まるといいつもの急制動。その後は障害物があったら止まってとのこと。林道を前進するとトラックがでてきた。通過するだろうと思っていたら道をふさぐ形で停止
「おいおい、障害物ってこいつかー!!」
いうまでもなくブレーキのタイミングはずれ、トラックに衝突。あとでやって二人はパターンをしっているので難なくクリアーしたのはいうまでもない・・・。その次の時間はシュミレーションでの運転をみてのディスカッションになる。とはいってもディスカッション自体はすぐにおわり、運転についての技術的なものや主に卒業検定についての質問をうけるというものだった。つくづく思うのだが引っ込み思案だった私が随分ものおじせず発言するようになったと思う。まあ、卒業がかかってるからなあ・・・。
高度なバランス走行。一本橋やS字、クランク等のほかに大型検定用のデコボコ道を走るなどをやった。デコボコ道は立って通過したほうが楽である(ケツが浮いたり沈んだりしないので)。また、Uターン(道からはみ出してしまった。教官いわくできる必要はないが、二輪の特性からして路上でやりたくなることの一つらしい)、狭い道(パイロン置き場だと思っていた場所を走る。バイクがちょうどはいれくらいの大きさのとこ)の通過などをやった。
次の教習が最後なので教官に急制動のやりかたを聞こうと教習終了後に質問する。今更いうのもなんだかなあと思ったが、この教官は前の時間の危険予測ディスカッションのときにわからないことは遠慮なくきいてくださいと、背中を押してくれたのできくことにした。ちなみにロードレースのチャンピオンである。教官は
「一気に握らないでだんだんと握っていく。ブレーキを最大まで握ってはだめだよ」
といってくれた。チャンピオンなのに気さくだ。本当にバイクが好きなのだろうなあと思う。余裕を感じる。このアドバイスをもとに最後の教習に挑む。急制動もなんなくクリアできた。しかし、最後の最後、クランクでこけてしまった。バイクをもちあげるがエンジンをかけてもすぐにエンストしてしまう。教習は終了だというのに・・・。焦ったもののなんとかすすむことができた。あとで分かったのだが、ギアをしっかりおとしておらずサード(3速)でクランクに突入してしまったようだ。どうりで安定しないわけだ(速度がですぎてた)。さらに1速のつもりでいたので、ギアをおとすこともせず発進しようとしていたためエンストが頻発してしまったというわけだ。
「クランク大丈夫か? 自由教習もあるから利用してな」
と教官にいわれ、いよいよ卒業検定を残すのみとなった。
自由教習というのは金を払って一時間バイクをのりまわせるというもの。苦手部分の克服などにつかえる。コースをきっちり走ってみたかったので一度やってみようかと思ったが予定があわず断念。そしていよいよ検定に挑む。
検定は最初に説明が行われる。教官が1コースと2コースどちらがいいと私に聞いてきたので
「1コースで」
とすかさず答えた。2コースはS字があり進入が苦手なので1コースにした。普通二輪では私が一番目にはしる俄然緊張する。安全確認をしてから周回を一周まわる慣らし運転をする。教官が教習生がのる前に機体をあたためておいてくれた。教官がかなり激しい運転をしてくれたので十分にあたたまったし、異常もないようだ。ならし走行が終わると検定にはいる。教官の話によると「止まれ」の標識のない道の出口でいったん止まっても減点にはならないらしい。コースを忘れたりするので一旦止まって再確認しながらいこうと思っていたが、ド忘れすることはなかったので、スムーズにいくことができた。教官にいわれたように直線では速度をだす。
検定は減点方式だが一発でおちてしまう項目がある。接触や転倒、一本橋の途中でおちる(橋からおりるとき後輪が脱落してもだめ、結構後輪は脱落しやすい)、クランクでのパイロンとの接触、急制動で停止線を超えてしまうである。これらに細心の注意を払った。一本橋はねばりすぎて脱落しては洒落にならないのでギリギリになる手前で通過した。スラロームは無難に通過した。その結果、後で教官にスラロームが遅い。六十キロ以上で走ってたら車(突っ込んできた)はかわせないよといわれてしまった。
みなが終わると最初の部屋に戻り結果発表。やった!! 合格した!! 不合格だと検定料と補講代で8000円がふきとぶだけに安心した。大型の人が一人おちてしまったが、接触があったためとのこと。次やればうかるでしょう。その人とは話をしたが昔、バイクに乗っていたが車にのるようになって乗らなくなってしまい、また乗りたくなったので大型をとりにきたとのこと。バイクが好きだからきたぜ!!という人だ。
教習中に教官がいっていたが、右足をつくと減点らしい。右足をつくのはバランスを崩したという証拠であり右足はブレーキの上につねになければならないからだ。私はよくそれで注意されたが、きつく注意されたのでスクーターに普段のるときも右足をつかないようこころがけ、検定ではつくことなくクリアできた。ちなみに教官の時代では右足をついいただけで検定終了(失格)だったという・・・。
その後、修了証書をうけとり、ホンダ・レーシングカレンダーというイカスカレンダーをもらう。所長がいうには今から免許センターにいけば午後の試験にまにあうので免許が今日手にはいるとのこと。しかし、免許センターにいくにはライディングブーツとジェットもしくは、フルフェイスメットがないと駄目らしい。が、教習所のをレンタルしてくれるらしい。さっそくジェットメット(フルフェイスはメガネをするとなにかとかぶりにくいのでジェットを使っている)とブーツをかりる。三千円を払うもののいわゆる保証金で持って帰ってこれば金は返してくれるというもの。しかし、原付の座席下の容量は少ない。とりあずブーツをいれジェットメットをかぶり、いつものメットは教習所のロッカーに突っ込んでおいた。ロッカーは百円いれなければならないが、鍵をかけると百円がでてくる仕組みになっているので無料である。
「あ、インナーキャップ忘れた!!」
卒業検定に夢中になりインナーキャップをとりだすのを忘れていた。バイク乗り場にいくとメットの中に私のインナーキャップが残っていた。教官が
「よう」
といってくれたので頭を下げた。自分の存在を認めてくれる人達なので非常に嬉しい。それにしてもインナーキャップをとりだすのをすっかり忘れていたが、よく考えるといつも、かぶり忘れていた気がする・・・。
そしていよいよ免許をとりにいく。
|
|||
|
|